学資保険で支払っている保険料が、実は所得控除の対象になるというのをご存知ですか?
年末調整といえば、一年間に給料から天引きされた所得税の還付を受けることができる制度ですよね。
年末調整の申告に関する話題が増えると、”もうすぐ年末”という気持ちになる方も多いのではないでしょうか。
そんな年末調整では、個々の家族の生活を考慮し、所得税の控除(差し引き)を申請することができることになっています。
一般的に年末調整で控除される保険料というと、生命保険のイメージが強いですよね。
ところが実は、年末調整の控除を受けられる保険料の中には、学資保険も含まれているんです。
そこでここでは、学資保険の保険料を年末調整で申告するために、その基礎知識や控除の申告方法、その他注意しておきたいポイントについてご紹介します。
お金が戻ってきて嬉しい反面、慣れないことも多くてちょっとハードルを感じる方も多い年末調整。しかし、ポイントさえ掴んでしまえばそんなに複雑なものではないんです。
これを見れば、年末調整で控除を受ければ学資保険の保険料を最大4万円控除することができるということはもとより、その方法や注意点についても理解することができるでしょう。
家計のことを考え、長く付き合っていく方の多い学資保険。年末調整の控除のような小さな積み重ねが大切になります。
長い目で見たときに損をしないためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
1 学資保険の年末調整:基礎知識
年末調整とは、サラリーマンや公務員など、働いたことにより給料を受け取っている人が、毎月の給料から先払いしていた所得税を、年末にその過不足を調整する手続きのことです。
所得税は、収入の全体から保険料などを払った分を引いた(控除)金額に税率をかけて求めるものですよね。
しかし、さすがに支払った保険料を全額、収入から控除することはできません。ある程度控除できる上限が決められています。
それを踏まえた上で、控除される金額を算出し、書類に記載して申請する、というのが年末調整の主な役割です。
所得税額は様々な控除がなされ、年末に決定します。そこで所得税を払いすぎていたことがわかれば、還付金が戻ってきます。
逆に、所得税が不足していれば、さらに追加で天引きされることになります。
各家族の負担を考慮して設けられている所得税控除。状況が許す限り加入しておいたほうが良いため、生命保険料もその控除の対象となっています。
「生命保険料が所得税控除の対象になる」というのは、生命保険料の一定の金額がその年の所得から差し引かれ、所得税や住民税の負担が軽減されるということです。
先ほどご説明したように、所得税の金額は給与など所得に一定の税率をかけて決まるものでしたよね。
支払った生命保険料を申請して、所得控除を受けることによって、課税所得(課税の対象となる所得)が下がます。その結果として、所得税と住民税が軽減されるというわけです。
安心して生活をするために必要な生命保険の保険料に加入するため、国が少しサポートしてあげよう!というようなイメージですね。
そしてなんと、嬉しいことにこの「生命保険料」の中には、将来のお子さんの教育費用を貯蓄しておく学資保険も含まれているんです。
この控除により、年収が300~400万円程度の方で、所得税を年間約5000円ほど節約することができます。金額的にはそれほど大きなものではありませんが、仮に支払い期間が18年間であれば、総額は約9万円にもなります。
小さな金額と侮ることなかれ、長期の契約になる学資保険においてはボディーブローのように効いてくるのです。
それでは、ここから年末調整で学資保険の保険料を控除するために知っておいたほうが良い、保険の分類についてご紹介していきます。
1-1 年末調整における学資保険の分類は?
年末調整では、家計の負担を考慮し様々な保険料が控除の対象となっています。その分類は
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
の4つです。
このうち、学資保険の保険料は生命保険控除に当てはまります。
学資保険といえば、”学費の積立”というの印象が強く、貯金代わりに利用している方が多いかもしれません。しかし、学資保険は積立に加え、被保険者である親が万が一死亡した時や、高度障害が生じた時に、
- 学費を賄う保険金が出る
- その後の支払いが免除される
という生命保険的な性質も持ち合わせています。
学資保険という名前から、生命保険というイメージは薄いかもしれませんが、そのような性質があるからこそ、年末調整では生命保険として控除の対象となっているのです。
1-2 学資保険が分類される”生命保険料控除”について
現行の税制(後述)では、年末調整の控除対象となる生命保険料控除の中でも、さらに3つの枠に分類されています。
控除枠 | 対象となる保険 |
一般生命保険料控除 | 死亡保険、養老保険、収入保障保険、学資保険など |
介護医療保険料控除 | 医療保険、がん保険、介護保険など |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険など |
これらのの3つの各枠ごとに、支払った保険料の金額に応じて最大4万円までの控除を受けることができます。つまり、3枠合計で12万円が控除される可能性があるのです。
学資保険が分類されている「一般生命保険料控除」という枠は、その年に支払った保険料の総額から、控除額を計算します。
ここで言う「総額」は、学資保険以外の死亡保険、養老保険、収入保障保険の保険料も合算したものです。「一般生命保険料控除」死亡保険などにも加入しているのであれば、その分の保険料も合わせて計算する、ということです。
ここからは、年末調整で学資保険を申請する際に気をつけておきたいポイントをご紹介していきたいと思います。
1-3 年末調整で学資保険を申請する際の注意点
年末調整の生命保険料控除として学資保険の保険料を申告するための注意点をお伝えします。
まず最も重要なのが、保険料を納めたことを証明する「生命保険料控除証明書」です。
通常「生命保険料控除証明書」は10月から12月の間に、加入している保険会社から送付されます。
紛失して年末調整の際に慌てることがないよう、厳重に保管しましょう。万が一届いていなかったり、紛失してしまった場合には、保険会社に連絡すると再発行してもらうことができます。年末調整までに入手するようにしましょう。
そもそも、学資保険を生命保険料として控除申請するためには、保険料を毎月きちんと納付しておかなければなりません。
1月1日から12月31日までに納付した保険料が生命保険料控除の対象となるので、滞納している分があれば年内に必ず納付するよう心がけましょう。
備考としてお伝えしたいのが、契約者が妻であっても、夫の所得から控除できる可能性があるという点です。
あくまでも保険料を支払いをした人の所得から控除される生命保険料控除。そのため、妻が契約者で会っても夫の所得から控除することができるのです。
しかし、その場合ひとつ条件があります。保険料を払っている夫や妻、またはその他の親族が保険金や年金のすべての受取人となっている、ということです。
また、控除を受けることができる金額の上限が決まっているため、夫の契約だけで上限を超えてしまう場合には、妻の生命保険料控除証明書を使っても意味はありません。
最後に注意したい点が、加入している学資保険の保険期間です。
保険期間が5年未満の生存保険・貯蓄保険だったり、財形貯蓄制度として扱われる保険は、控除対象から外れることになっています。
ご自身が加入している学資保険の保険期間や契約者の状況などを、忘れず確認してから年末調整に臨みましょう。
さて、学資保険と年末調整についての基礎知識を確認してきました。
ここからは、実際にその申請を行う際のプロセスなどの具体的な部分をご説明していきたいと思います。
2 学資保険の年末調整について:申告方法
年末調整で学資保険料の控除を行う際には、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」に必要事項を記入する必要があります。
そして、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を添えて提出します。手続きは基本的に以上で終了となります。あとは会社が行ってくれ、基本的には確定申告をする必要はありません。
しかし、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書」にご自身の控除額を計算し、記入する必要があります。
そこでここからは、一見複雑に見えるこの控除額の算出方法を見ていきたいと思います。
3 学資保険の年末調整について:控除額の算出方法
年末調整において学資保険料の控除申請を行う時には、先ほどお伝えしたように、自分で控除額を計算し、「給与所得者の保険料控除等申請書兼配偶者特別控除申告書」に記入する必要があります。
控除額を計算するにあたって注意したいのが、学資保険が分類される”生命保険料控除”には新方式と旧方式があり、加入している保険に合わせた方式で算出する必要がある、という点です。
では、新制度と旧制度どちらの契約もある場合どちらで申告をすればいいのでしょうか。また、年末調整をした時にどの程度金額に差が出てくるのでしょうか。
そういった疑問を解消するために、ここから新制度と旧制度の違いについてご説明していきたいと思います。
3-1 年末調整の新制度と旧制度
1-2 学資保険が分類される”生命保険料控除”についてで軽くご説明しましたが、学資保険が含まれる生命保険料控除は、平成22年度税制改正によって大きくその制度が変わっています。
新方式と旧方式のどちらで算出するのかは、いつ学資保険の契約を締結したかによって決まります。
2011年12月31日以前に契約した場合は旧方式を、2012年1月1日以降に契約した場合は新方式を用いて算出する必要があります。
この改正により、死亡保障・医療保険を中心とした「一般生命保険料」、個人年金保険の「個人年金保険料」の2種類に加え、医療保険・がん保険・介護保険などの「介護医療保険料」が新たに設けられ、計3種類になりました。
大きな変更点としては、控除額の合計額の上限が、旧制度では10万円だったのに対し、新制度では12万円と拡大したことが挙げられます。
旧制度
一般生命保険料控除 | 5万円 |
個人年金保険料控除 | 5万円 |
新制度
一般生命保険料控除 | 4万円 |
介護医療保険料控除 | 4万円 |
個人年金保険料控除 | 4万円 |
3-1-1 旧制度は平成23年12月以前の契約に引続き適用
旧制度では、生命保険料控除の中も以下の2種類に分類されていました。
- 一般生命保険料控除:死亡保障・医療保障・介護保障といった生命保険全般
- 個人年金保険料控除:個人年金保険料税制適格特約が付いた個人年金保険
「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」のそれぞれに応じて、所得税・住民税ごとに以下のように所得控除額を計算します。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円以上 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円以上 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円以上 | 一律40,000円 |
(参照:No.1140生命保険料控除|国税庁)
3-1-2 新制度は平成24年1月以降の契約から
新制度では3種類です。
- 一般生命保険料控除:生存または死亡に起因して支払う保険金・その他給付金に係る保険料(死亡保障)
- 介護医療保険料控除:入院・通院などにともなう給付部分に係る保険料(医療保険・がん保険・介護保険など)
- 個人年金保険料控除:個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険
「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」のそれぞれに応じて所得税・住民税ごとに、以下のように所得控除額を計算します。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円以上 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円以上 100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円以上 | 一律50,000円 |
(参照:No.1140生命保険料控除|国税庁)
3-2 年末調整の新制度と旧制度の金額の違い
上でご紹介した表を使って、新制度と旧制度の学資保険の控除額の求め方と、その金額にどのような差が生じるのかをご説明します。
仮に、2011年10月(旧制度期間)に学資保険を契約し、年間の支払い保険額が80,000円の場合、控除額は
80,000×1/4+25,000=45,000円
となります。
同じ条件の学資保険を、2015年の1月(新制度期間)に契約した場合、控除額は
80,000×1/4+20,000=40,000円