お子さんの教育資金を計画的に貯蓄するために、多くの方が活用している学資保険。
お子さんの進学などのようなお金がたくさんかかるタイミングに合わせ、祝い金や満期保険金と呼ばれるお金を受け取ることができる、という保険商品です。
銀行に預けておいたりするよりも利率(返戻率)がよく、手軽に始められることから人気を博しています。
祝い金は満期保険金は課税対象となるため、それらを受け取る際には税金がかかってきます。
では、いったいいくらぐらいの金額を受け取る場合に、いくらぐらいの税金が発生するのでしょうか。
またいつ、どのようにして納めれば良いのでしょうか。
この記事では、学資保険でお金を受け取ったときに生じる税金についての疑問にお答えすべく、3つのポイントをご紹介します。
目次
1 学資保険には税金がかかる?金額や条件は?
確かに、学資保険によって受け取った祝金や満期保険金などのお金は、課税対象と見なされます。
しかし通常の加入方法であれば、実際に税金が発生するケースというのはあまり多くなく、稀なことと言えるでしょう。
しかし、「高額な保険契約」や「契約者と保険金受取人が違う」といった特殊な場合には税金を支払わなければならなくなる可能性が高くなります。
どのような条件であれば税金を支払う必要が生じてくるのか、加入後に合わせることがないようにポイントをしっかりと抑えておきましょう。
1-1 学資保険の「契約者と受取人」を誰にするかがポイント!
学資保険に加入する際は、保険の契約者(お金を支払う人)・保険金の受取人・被保険者を設定する必要があります。
学資保険の場合被保険者の項目ははかならず「お子さん」になります。しかし、契約者と受取人を誰に設定するかでどのような税金がかかるかが変わってきます。
学資保険の場合、親御さんが保険料を払うというご家庭が多いのではないでしょうか。
親御さんが保険料を支払い、満期金などを受け取るのも親御さんである、という場合、親御さん自身の所得の一部であるとカウントされ、「所得税」の対象となります。
一方、満期金や祝い金などをお子さんが受け取るようにしていた場合についても考えてみましょう。
保険料を負担しているのはお子さんではありませんので、お金を親御さんから譲り受けた(贈与された)とみなされます。従ってその場合は「贈与税」の対象になります。
「いずれにせよ税金がかかってくるのではないか」と感じられるかもしれませんが、所得税としてみなされる場合は、実質的には税金が発生しないケースがほとんどです。
一方、贈与税の場合は税金がかかる可能性が高くなります。
多くのご家庭では、お子さんのお父さんかお母さんが契約者として学資保険に加入されていることでしょう。その場合、受取人もお父さんかお母さんにしておくことで、保険金の税金がかかる可能性を低くすることができます。
仮に、お子さんのおじいちゃんが学資保険の契約書になるというケースがあるかもしれません。その場合は、受取人がお子さん自身であっても、またお子さんのお父さんであっても贈与税の対象になるので注意が必要です。
ここまでのポイントをまとめると以下のようになります。
- 契約者と受取人が同じ人物 =>「所得税」の対象:税金がかかる可能性が低い
- 契約者と受取人が違う人物 =>「贈与税」の対象:税金がかかる可能性が高い
可能性は低いものの、契約者と受取人が同じであり「所得税」の対象である場合であっても、学資保険が高額商品であった場合は所得税が発生する可能性もあります。
実際にどれくらいの税金がかかるのか、といったところも含め詳しく見てみることにしましょう。
1-2 所得税がかかる場合
学資保険の契約者と受取人が統一人物である場合は、学資保険の満期金などが「一時所得」というに分類され、課税対象とみなされます。
しかし、実際に税金を支払う必要が出てくるのは、とりわけ高額な保険契約で加入した場合のみとなります。
受取保険金が課税対象になるかどうかは、こちらの式を計算して出てきた数字を、下の表に当てはめることで確認することができます。
(所得金額 – 所得を得るために必要な金額 -特別控除50万円)× 1/2
一時所得 | 課税対象額
(一時所得の半分) |
税金を払う必要があるか? | ||
自営業者 | 会社員・公務員 | 専業主婦 | ||
0円 | 0円 | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
~ 40万円 | ~ 20万円 | 課税 | 非課税 | 非課税 |
~ 76万円 | ~ 38万円 | 課税 | 課税 | 非課税 |
76万円超 | 38万円超 | 課税 | 課税 | 課税 |
この表の中の「会社員・公務員」の列は、学資保険以外には給与所得や退職所得しかない場合を仮定しています。また「専業主婦」の場合も、学資保険以外に所得がないケースを仮定しています。
計算式の中に出てきた先に出てきた「所得金額」についてですが、その年に発生した一時所得の総額となります。
一時所得の中には、以下のものが含まれます。
- 生命保険の死亡保険金や解約返戻金、満期保険金など
- 火災保険や自動車保険(自賠責保険)の満期返戻金
- 懸賞、福引の賞金品
- 競馬、競輪の払戻金
このような細かいものも含めて全て計算する必要があります。学資保険の場合は、祝い金や満期保険金の額がこの一時所得に該当します。
「所得を得るために必要な出費」というのは、必要経費のようなものと考えて相違ありません。学資保険についていえば、それまでに支払った保険料の総額がこれに該当します。
たとえば、加入しているのが毎月の保険料2万円、総額が500万円の学資保険だったとします。加入の20年後に満期金を受け取流とすると、その所得金額は500万円。
この金額を受け取るために必要になった出費は以下の通りになります。
2万円×12か月×20年=480万円
この場合の金額を、先ほどの所得税を計算する数式に当てはめてみましょう。
(500万円-480万円-特別控除50万円)×1/2=-15万円
出てきた答えがマイナスになるため、課税対象にならないことがわかります。つまり所得税額は0円ということです。
これを見ていただいただけでも、かなりの高額な学資保険でなければ課税対象とはならないというのがご理解いただけるのではないでしょうか。
1-2-1 複数の保険の満期保険金を受け取る場合
学資保険の満期保険金が支払われる年に、その他の保険の満期保険金の受取の発生するという場合はどうなるのでしょうか。
その場合は両方の満期保険金の総額から両方の払込保険料の総額を差し引きます。養老保険の満期保険金を受け取るケースを例に考えてみましょう。
学資保険:払込保険料=92万6千円 / 満期保険金=100万円
養老保険:払込保険料=150万円 / 満期保険金=100万円
((100万円+100万円)-(92万6千円+150万円)- 50万円)÷ 2 = – 46万3千円
こちらも先ほどと同じく金額がマイナスになります。そのためこのケースでも満期保険金に税金は発生しません。
学資保険と養老保険の満期保険金を同じ年に受け取っても、それそれの金額が100万円程度であれば税金のする心配はないということですね。
では一体、いくらぐらいの保険であれば税金が税金が発生してくるのでしょうか。
現在販売されている学資保険であれば、600万円程度の満期保険金が受け取れる、大型の学資保険であれば税金が発生してきます。
満期保険金が600万円とうと、18年契約のものであれば毎月25,500円程度の保険料をずっと払い続ける計算になってきます。
一般的な学資保険は受け取れる満期保険金が300~400万円ですので、契約者と受取人が同じ場合はほとんどの場合は税金がかからないという判断で問題ないでしょう。
しかし、お子さんが複数人いる場合や、私立の理系大学への進学を考えている場合など、大型の学資保険にもニーズはあるでしょう。念のため、高額な満期保険金の学資保険の場合でも税金を払わなくて良くなる方法をお伝えしておきたいと思います。
1-2-2 高額な学資保険でも税金を払わなくて良くなる方法
高額な満期保険金を受け取れる学資保険に加入したい、と思った場合、契約者が世帯主1人であれば税金が発生しますよね。
そんな時は、保険を分割し、それぞれの契約者を世帯主と配偶者西て2つの学資保険に加入することで税金を払う必要がなくなります。
たとえば、800万円の満期保険金を受け取れりたい場合には、世帯主と配偶者それぞれが、400万円の満期保険金が受け取れる学資保険に加入する、ということです。
400万円の満期保険金であれば基本的に税金の心配をする必要はありませんので、効果的な節税方法と言えるでしょう。
1-2-3 学資年金タイプは税金がかかる可能性が高い
大学在学中の費用を賄うために、18歳から22歳くらいまで毎年定額の「学資年金」を受け取るタイプの学資保険もあります。
先ほどご紹介した通り、満期保険金が一時所得に分類されるのに対し、学資年金は雑所得(ざつしょとく)という扱いになります。
所得税法における所得の一種であり、利益とほぼ同じ意味です。収入から必要経費を差し引いた金額がこれに該当します。
完全に正確な値ではありませんが、ざっくりとした金額であれば以下の計算式で算出することができます。
学資年金額 -(保険料総額 ÷ 年金受取回数)= 雑所得
この計算式で求めた金額を以下の表に当てはめることで、課税対象になるかどうかを判断することができます。
雑所得
(課税対象額も同額) |
税金を払う必要があるか? | ||
自営業者 | 会社員・公務員 | 専業主婦 | |
~ 20万円 | 課税 | 非課税 | 非課税 |
~ 38万円 | 課税 | 課税 | 非課税 |
38万円超 | 課税 | 課税 | 課税 |
専業主婦は38万円以下、会社員は20万円以下、自営業者は0円以下の雑所得であれば非課税となりますが、0円以下になることはないため、自営業者は必ず課税義務が発生してしまうと考えていいでしょう。
詳しい試算はまた後ほどご紹介しますが、特別控除などがないことに加え、発生する最低金額も、一般的な学資年金であれば簡単に超えてしまう金額が設定されています。
従って、学資年金タイプの学資保険を契約する際には、所得税がほぼ間違いなく発生すると考えたほうがよいでしょう。
ちなみに、祝い金は学資年金とは違い一時所得として計上されます。そのため、細かくお金を受け取りたいという方は祝い金付きのものにすることをお勧めします。
1-3 贈与税がかかる場合
学資保険で保険料を支払う人と学資金を受け取る人が異なる場合は贈与税がかかってきます。
例えば、お子さんから見たおじいちゃんが、かわいい孫のために学資保険に契約する、というパターンは珍しくないでしょう。
この場合のように、保険料を支払う契約者が祖父母で、満期保険金の受取人がお子さんの親のであれば、契約者と受取人が異なるため、贈与税の対象となります。
贈与税は以下のような計算式で算出されます。
1年間に取得した学資保険金 – 110万円 = 課税対象額
110万円をマイナスしているのは贈与税の基本控除額です。金額に関係なく1年に110万円までとなっています。出てきた課税対象額を以下の表にあてはめて税率を算出します。
贈与税の速算表
控除された後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ‐ |
200万円以上 ~ 300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円以上 ~ 400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円以上 ~ 600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円以上 ~ 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円以上 | 50% | 225万円 |
所得税の時と同じ金額でで計算すると、500万円から基礎控除110万円を差し引き390万円が課税対象額となります。これを上の表にあてはめ、
390万円×20%-25万円=53万円
となり、53万円に対して贈与税として課税されることになります。所得税であれば0円だったにも関わらず、お金を誰が受け取ったかという違いだけで贈与税になり、53万円。小さな違いが大きな結果に結びつくということです。
契約者と受取人が同じであれば、よほど高額な学資保険でない限り税金がかかることはなかったにもかかわらず、契約者と受取人が変わるだけで、一般的な学資保険でも課税対象となってしまうんですね。
しかし、この場合であっても、契約者が祖父母ならば学資保険金の受取人も祖父母に設定するだけで回避ができます。契約者 = 受取人であれば、贈与にカウントされないということです。
1-4 まとめ&学資保険の課税シミュレーション
ここまでご紹介してきたように、学資保険は課税対象とみなされるケースはあまりよくありません。また、課税対象となるような場合であっても、契約時に受取人と契約者を同じさえすれば回避することができます。
ここまでのポイントを、次の表を用いてまとめておきましょう。
契約形態 | 契約者
(保険料負担者) |
被保険者 | 受取人 | 税金の種類 | パターン | ||
満期保険金 | 契約者 = 受取人 | お父さん
|
お子さん
|
お父さん | 所得税 | 所得税一時所得
(一時受取) |
A |
雑所得(年金受取) | B | ||||||
契約者 ≠ 受取人 | お母さん or お子さん | 贈与税 | C |
ご紹介して内容を踏まえ、税金がなるべくかからないようにするためには、A,B,Cどのパターンで契約するのがもっとも有利と判断できるでしょうか。
ここまで解説をお読み頂いた皆さんであればお分かりのこと思いますが、契約者と受取人が一緒で、かつ学資を一時受取で受け取る、Aパターンが有利ですよね。