④第4位、第5位は子どもに頑張ってもらうという方法ですね。親としては負担の軽減になるのですが、アルバイトのほうが忙しくなって学業に支障が出るのでは本末転倒なので、その自覚を本人に持ってもらうということが必要です。また、奨学金については、申し込みのはるか以前にいろいろ準備しておかないと、後々の負担が違ってくるので注意が必要です。これは次項で詳しく説明します。
⑤第8位の「親類から援助してもらっている」について、「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」の利用が可能ですが、色々と制限がありますので次の項で説明を加えたいと思います。
⑥第9位「国の教育ローン」を借入れしている、が意外に低くて驚きました。借入金利は、数年前まで日本学生支援機構の第2種奨学金の返済金利とそれほど違いがない水準でしたので、やはり「ローン」という言葉に抵抗があるのでしょうか。
以上、学費のねん出方法のアンケートを簡単に見てきましたが、事項でもう少し詳しく見てみたいと思います。
目次
2-2 学資の最大化には、「攻め」と「守り」の両方が必要
「最大化」というと「いかに有利な運用をするか」という「攻め」に目が行きがちですが、「いかに、無駄な費用の発生を抑えるか」という「守り」の部分も需要となってきます。また「攻め」と「守り」は表裏一体のものであること付け草えておきます。
「学資保険」やその他の金融商品を選択することは「攻め」と言えます。しかし無理な契約内容で中途解約することになると、かえって損をすることにもなるので、そうならぬように慎重に検討するという「守り」も必要になるのです。
一方「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」の内容を良く知らずに利用すると、予期していなかった贈与税が発生し、その金額は現状の利回りでは学資保険の運用益など吹っ飛んでしまうほどかもしれません。
このような「知識を持たなかったために発生するコスト」を発生させないようにする「守り」も、低金利で時代には重要なことです。
2-2-1 預貯金、学資保険(低解約返戻金型終身保険)、または個人向け国債など長期の商品は何に、いつ、どんな条件で加入したら良いのか?
預貯金は、大学受験など長期の運用には向いていないのでここでは除外。あくまでも、短期の一時的に預けていく商品と考えるべきでしょう。
個人向け国債については、利回り等では将来学資保険、低解約返戻金型終身保険よりも有利となる可能性はありますが、購入方法が煩瑣なので、長期間買い続けるとなると選択肢としては微妙です。
次に学資保険についてです。
「すべて国公立」、または、「高校までは公立コース」に進学する場合、高校卒業時までは「私立コース」ほど資金負担がないので、高校卒業時(OA受験・学校推薦などのケースも考えて高校3年時の11月頃までに)一括で受け取れるものか、または加えて学生時代にも受け取れるものに加入しておくのが良いでしょう。
「高校以降は私立コース」という場合には、高校入学時と大学入学時、さらには大学時代に受け取れるものに加入しておく。
加入時期を考えると、早ければ早いほうが、積立期間が長くなり、家計への負担も少なくて済むことになります。やはり大学進学(私立の場合は高校進学時)の資金としては学資保険が最適かもしれません。
具体的には、ソニー生命のスクエアⅡ型などが選択肢に入ってくると思います。
やや極端な「攻め方」ですが、お子さんが生まれる前に(さらには結婚前でも)加入できる「低解約返戻金型終身保険」に20代前半で加入、早めに積立期間を満了させてしまうという方法もあるかもしれません。
たとえば、オリックス生命保険・終身保険ライズに22歳で加入、払込期間20年の場合、
オリックス生命保険 | 加入年齢 | 払込期間 | 払込満了 | 死亡保険金 | 月払保険料 | 満期返戻率 |
終身保険ライズ | 22歳 | 20年 | 42歳 | 300万円 | 7422円 | 108.8% |
この方法であれば、
①早めに加入することで家計の負担が少なくて済む。
②積立期間満了以降は年利が約1%ずつ上昇していくので高い利回りが見込める。
③中途の一部払い出しが学資保険よりも弾力的に出来る。
④途中で契約者が亡くなった場合には死亡保険金が全額受け取れる。
さらに⑤学資保険として利用しない場合でも死亡保険に加入していたと考えることができる。というメリットがあります。
学資保険加入に際しては、中途解約をすることにならぬように、家計とのバランスを検討することが必要です。これがいわゆる「守り」の部分となると思います。
2-2-2 大学入学時、奨学金を受ける際の注意事項
現在「奨学金が返せない」という悲痛な叫びをあげる元受給者の叫びが取り上げられるようになってきました。折角大学を卒業しても、返済負担が大きいだめに子育てはおろか、結婚すらできない人は増えているという現状がやっと報道されるようになりました。
上記で引用した資料からも、約2割の学生が奨学金を受けている現状で、今後ますます厳しい状況が生まれてくることが予想されます。一部では、貸与ではなく給付型の奨学金もあるようですが、まだまだ主流は貸与型です。
そこで、奨学金を受ける場合には、①給付型の奨学金がある大学を探す。②自治体から給付型の奨学金が受けられないか打診する。ということをまず考えましょう。
しかしどうしても貸与型を借りなければいけないケースを想定し、出来れば第1種(無利息)を受けれれる条件「特に優れた学生及び生徒で経済的理由により著しく修学困難な人に貸与」の特に前半を満たすように高校時代から準備をしておく必要があるでしょう。
利息付きである第2種は、現在利率はマイナス金利の影響で.01%となっていますが、最高3.0%まで上がる可能性のある制度なので、出来れば高校在学時から第1種を目指しておくべきだと思います。正直3%の利率でも長期間になると思っているよりも負担があります。
2-2-3「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」の利用上の注意点
参照国税庁HPより
・平成25年度から「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」が開始されています。制度の内容を簡単に説明します。
①平成25年度~平成30年度の時限立法である。
②祖父母から30歳未満の孫へ1人1500万円まで非課税で贈与できる。
(1人の孫に対して複数の親族から贈与した場合でも合計1500万円までが限度)
③贈与は「教育資金口座」(1金融機関1店舗のみ、解約・移管不可)への入金という形をとること。
④口座の開設には金融機関へ贈与契約(書面)の提出が必要。
⑤口座からの払戻しは教育資金のみの支払いに限の支払いのみに限定。
⑥非課税措置は、孫が30歳になった時点で終了。
残高が残っていた場合、110万円を超える金額に対し贈与税の申告が必要。
という制度です。非課税という優遇措置がることから、上記のように厳しい制限をもうけています。
さらに支払い対象となる「教育資金」についても厳しく限定されていて、
①「学校等に対して直接支払われる金銭」~1,500万円まで非課税
(ⅰ)入学金、授業料、入園料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
(ⅱ)学用品費、修学旅行費、学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
②「学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの」
(ⅰ)学習塾や水泳教室、そろばん教室などに直接支払われるもの
(ⅱ)スポーツ(水泳、野球など)、文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)に直接支払われるもの
(ⅲ)上記で使用する物品の購入に要する金銭となっています。
取り扱える金融機関ですが、この制度の対象となるのは、信託銀行、銀行、証券会社とされています。
従って、「学資保険の一括払い」にこの制度を利用することはできません。
このように、制限の多い制度ではありますが、「すべて私立コース」の場合、総額で約3000万近くかかる費用の約半分が非課税で援助してもらえるこの制度は、非常に有効なものであると考えます。
現在は平成30年度まで延長されているので、ぜひ検討されてはいかがでしょうか。
2-2-4 国の教育ローン、学費準備の最後の手段?
上記すべての方法を検討して、なお資金が足りないときには、日本政策金融公庫の「教育一般貸付」(国の教育ローン)を検討してみてはいかがでしょうか。
「ローン」という言葉に抵抗があるかもしれませんが、現状の金利ならば、充分検討に値すると思います。民間の金融機関の商品よりは条件が良いはずです。
利用条件は以下の通りとなっています。
①世帯年収が低くても利用できる。
②資金使途の幅が広い(PCの購入や定期代にも利用できる)
③日本学生支援機構の奨学金との併用が可能
④1人につき350万円以内(450万円の場合有)
⑤金利(平成28年5月10日現在)1.9%(固定金利・保証料別)
母子家庭、父子家庭、世帯年収200万円以内の方、年1.50%(固定金利・保証料別)の優遇有
⑥返済期間15年以内
マイナス金利の影響で、今後借入金利はさらに低くなることも考えられます。運用に厳しい状況は、借入にはプラスだ、ということです。上記のとおり固定金利ですので、今後金利が上がってもリスクはありません。
また、母・父家庭には優遇金利の適用もありますので、積極的に利用を検討されてはいかがでしょうか。
2-3 限られた学資を有効に使う方法まとめ
①大学入試に備えるには、学資保険が妥当だが、若い時に低解約返戻金型終身保険に加入し、早い時期に払込満了をしておけば、学資保険の代替に使うことができる。加入時には中途解約にならぬように慎重に検討が必要。
②奨学金は返済時のことを考えて、給付型のものを探すか、次善の策として無利息の貸与型に該当するように、高校在学中から情報収集に努める。
③教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の利用を検討する。その際、贈与税が発生するケースがあるので、そうならないように内容を十分に熟知しておく。
④全てを検討してもまだ足りないときは国の教育ローンの利用を考える。現在は金利的にも十分利用可能な状況なので、選択肢の一つに加えたい。
3 最後に
子どもの教育には、20年以上の時間が必要です。どんなに綿密な計画を立ててもその通りにはいかないものかもしれません。しかしそれでも基本的な計画は作っておくべきと考えます。
基本計画があれば、それをもとに学費予算を立てることができます。計画とのかい離が生じた場合でも修正を加えることもできるのです。
また、基本的なことかもしれませんが、子どもの教育について夫婦間で意思の疎通、情報の共有を充分に行っておくということも重要です。
私は娘の教育を家内にほとんど任せていたため、高校受験直前に家内が急死した時どうしたらよいかわからず、対応に追われながら何とか大学卒業までこぎつけたという感じでした。
そのため、事前に準備しておけばかからずに済んだであろうコストが多々発生、終わってみると予想をはるかにオーバーする学費がかかっていました。
もう一度繰り返しますが、低金利の現状では、高利回りの運用を求める「攻め」と同時に、無用のコストを発生させない「守り」も重視して行くべきだ、と考えます。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。