「学資保険」に加入されている方は、通常ほかの「死亡保険」などにも加入されている方がほとんどだと思うので、控除の有無についてはあまり考えなくてもよいのではないでしょうか。
目次
⑤ 保険会社が破たんした場合
学資保険」は契約期間が長いので、契約した保険会社が破たんするケースも頭の片隅に入れておかなければなりません。
「そんなこと有り得ない」と思っているかもしれませんが、保険会社や銀行が連鎖的に破たんしたのはつい20年前のことです。
確かに、保険会社が破たんしても「生命保険契約者保護機構」(以下保険機構)という契約者を保護する機関があるので、一定の救済を受けることができ、ただちに契約した保険がすべて無になるわけではありません。
しかし破たん後の処理の仕方によっては、責任準備金の削減と予定利率の引き下げの可能性があり、契約者にとっては不利になります。影響は「学資保険」のような「貯蓄型保険」により大きいと言われています。
また、保険会社が倒産しても、保険契約の移転が完了するまでは解約出来ませんし、移転が完了した後で解約しようとしても、同様の人が続出して解約が殺到した場合、解約返戻金が減額される措置が取られることがあります。
この場合、一時払のほうが解約返戻金減額の影響を受けやすいと思われます。
⑥「一時払」と「全期前納」についてのご注意。
上記のような書き方をすると、「全期前納のほうが有利そうだから、そちらにしよう」とお考えになる方がいるかもしれませんが、全ての「学資保険」で「一時払」と「全期前納」が選択できるというわけではないので、注意が必要です。
実際に調べてみると、「学資保険」で「全期前納」が使えるのは明治安田生命「つみたて学資」・JA共済「こども共済すてっぷ」・アフラック「WAYS」・アフラック「夢みるこどもの学資保険」ぐらいです。
以前は出来たが、昨年になって選択できなくなった保険会社もあります。(もしかしたら見落としがあるかもしれませんので、その際はご容赦ください。)
それ以外の商品の場合で一括で払おうとすると、基本的に「一時払い」しか選択できないということになります。
2 一括払いした場合のメリット、デメリット比較!
それでは、以下一括払いをした場合のメリット、デメリットをまとめていきたいと思います。
2-1 一括払い(主に一時払い)の場合のメリット
全期前納払いは、年払いに準している制度なので、おもに一時払いを選択した際のメリットについて考えてみたいと思います。
① 一括払いのメリット~割引率が高いので返戻率アップに寄与
まず、割引率が高いことが一時払いの第一のメリットでしょう。資金に余裕があり健康に自信があり、返戻率のアップを最優先で考えれば「一時払い」は充分検討に値するものだと思います。
ただ、自分のことを思い出してみると、子供が生まれたときはまだ収入も貯蓄もそれほどなく、一時払いなどできる状況ではありませんでした。一時払いは、百万以上の支払いになります。20代~30代の方にはなかなか大きな金額ではないでしょうか。
② 祖父母からの学資援助のツールとして利用可能
そこで実際にどのような方が資金を出しているのかを見てみると、「一時払い」を利用している方の多くは祖父母世代が多いようです。
自分で契約者となる場合もありますし、現金を子供に渡して加入させるというケースもあるようですね。
祖父母が契約者となり、被保険者がお孫さんとなる契約をする場合、一時払いであれば告知が必要のない保険会社もあり、加入しやすくなっています。資金に余裕がある世代で、貯蓄性も高く確実に孫に学資を渡せる「学資保険」は利用しやすい商品だと思います。
ただ、年齢が極端に高い場合、加入できないケースもあるので要確認です。
また、「全期前納」については、「一時払い」より返戻率は悪くなるものの、「一時払い」の欠点を補うものであり、利用できるのであれば充分検討に値すると思われます。
③ 中途解約した場合に解約返戻金>保険料となる期間が早い
上記の表でも見た通り、何らかの事情により解約する場合に、解約返戻金>保険料となる期間が一時払いのほうが早く到来します。(参考例の場合、保険開始から3年目。)
「学資保険」のような長期の金融商品は、インフレと金利上昇に弱いという弱点があります。返戻率は契約時に決まっているので、金利が上がったばあい保険会社の業績は上がりますが契約者の受け取る満期返戻金は変わりません。
さらにインフレが進行すると、予定していた金額では学資に足りないということが発生します。
それを回避するには、金利上昇局面で保険を中途解約し新たな金融商品に乗り換える必要が生じるでしょう。一時払いの場合、解約返戻金>保険料となる年数が少ないので、機動的に動きやすいと思われます。
2-2 一括払い(主に一時払い)の場合のデメリット
ここからは、一括払い(主に一時払い)を選択した際に被る可能性のある、デメリットについてご紹介します。
① 贈与税がかかる可能性に注意しなければならない
学資保険の保険料を祖父母が負担する場合、自分達が保険契約になるのではなく、加入するための現金を父母に渡した場合、年間110万円を超えると贈与税の対象になります。
支払総額が110万円を超える場合は、「年払い」「半年払い」「月払い」などの支払方法にしたほうが良いと言えるでしょう。
② 払込免除特則の利用ができない
「生命保険は一種の賭け事である」という言葉があります。なるほど、一定期間に亡くなるか亡くならないかを保険会社との間で「賭ける」行為であるのかもしれません。
日本人にはしっくりこない考えでしょうが、もともと生命保険が発祥し成長したイギリス人は無類の賭け事好きという国民性です。
そう考えれば、「自分が死なない」ほうに掛けて、「払込免除特則」を使わないという選択もありかも知れません。しかし私は最初に書いた通り、「学資保険」のメリットの最大のものが「払込免除特則」であると思います。
祖父母が加入者の場合は別として、可能な限りこの制度は利用したほうが良いのでは、と思います。ですので、「全期前納」の利用が可能な商品ならば、そちらを検討するのがオススメです。
ただ、「学資保険」を検討する場合、第1にはその保険会社の健全性、第2に返戻率という順番で検討されると思います。「全期前納」があるか否かというのは後順位になるので、利用できないケースが多いでしょう。
その際は、「年払い」以下の支払方法の利用が良いと思います。
③ 手元の資金が不足した時に「一部の払い戻し」などができない
まとまったお金を支払保険料として払い込んでいるので日々の資金繰りは当然タイトになることが予想されます。
お金は、いつまとまった額が必要になるかわかりません。「一時払い」にしろ「全期前納」にしろ、保険会社に払い込んだ保険料は解約以外で払い戻しする方法がありません。
保険会社によっては、契約者貸付金制度を利用することもできます。短期間で返済できるのであれば、返戻率にそれほど影響ありませんが、長期にわたれば結構な金利がかかります。
結局解約ということになれば、解約返戻金と相殺ということになり、何のために積立していたのかわからなくなります。保険料の払込み方法を決める前に、家計のバランス等をもう一度見直しておく必要があるでしょう。
2-3 結論
結論とすると、メリット、デメリットともにあり、一概に決められないと思いますが、もし自分が今学資保険に加入するのであれば、
- 保険会社の健全性を調べ、自分で大丈夫と納得した保険会社を何社か選ぶ。
- 選んだ保険会社の中で、返戻率の高い商品を、内容を良く理解した上で選択する。
- もし、手元資金に余裕があれば一括払いを考えるが、その際に「全期前納」の利用できる商品があればそれを選択し、払込免除特則利用の可能性を残しておく。
という順番で検討します。
そして、もし手持ち資金に一括で払える余裕があっり、さらに「全期前納」が利用できる商品であれば一括払いを視野に入れます。
では、「一時払い」しか選択できない商品の場合、どうしたら良いでしょう。「払込免除特則」の恩恵を受けるというということを第一に考えれば、「一時払い」は利用しないほうが良いと思っています。
繰り返しになりますが、人生何が起こるか解りません。残された家族に少しでも有利な形で保険を残しておけるようにしておきたいものです。
ご主人が亡くなって進学をあきらめたというご家庭は本当に多いのです。「払込免除特則」は、そういうご家庭にとって強い味方となるはずです。
極論すれば、「払込免除特則」があるからこそ、「学資保険」は加入する価値があると思っています。利回りだけならば、もっと有利な商品は外貨定期預金や投資信託など他にもたくさんあるのです。
ただ、確実に金利が上昇するという確信が持てるのであればあえて一時払いにして、早い段階で解約可能な状態にしておく、ということも面白いかも知れませんが、金利がどうなるかなどだれにも解りません。
異常な低金利だ、といわれてもう20年以上たちます。ついには「マイナス金利」という聞いたことがない言葉まで飛び出す世の中です。
ですので、「一時払い」しかできない商品であれば、利用しないほうが良いのではないか、というのが私の今回の結論になりました。
最後に、保険に限らず、金融商品の契約に関して思っていることを少し書かせていただきます。
興味がなければ、読み飛ばしてください。
「保険会社の健全性」を第一位に置いたのには私の経験からです。私は昔、都市銀行に勤務していました。その銀行は20年前の金融危機の波にのまれ、今はもう影も形もありません。
明治時代に設立された歴史と伝統のある銀行でした。そして同じころ、保険会社の多くが同じ波にのみこまれ、消えていきました。
当時は、金融機関は絶対につぶれないと言われていた時代でした。それでも一旦パニックが起きるとその波は津波のように襲い掛かってきます。
毎日のように破たんのニュースが流れ、銀行の窓口には預金を解約するお客さんが列を作り、証券市場は売りに次ぐ売りで連日ストップ安という日々でした。
今は、そんな日々があったなどということを知らない世代が増えました。でも歴史が繰り返さないと誰が言えるでしょうか。
「学資保険」は、期間が長期にわたり、かつ「貯蓄」に重点が置かれた商品です。自分が預けるお金が安全に運用されるかどうかを常にしっかり見ていなければいけないと思います。
破たんした会社に資産を預けていた場合、確かに「保険機構」が補償するので0にこそなりませんが、やはり何らかのデメリットは発生するのです。
一方「学資保険」は、貯蓄商品ですので、安全面ばかりではなく「返戻率」も常に意識しておかねばなりません。契約内容では「返戻率」マイナスという商品もありますので十分注意が必要です。
いくらお勧めをされても、自分で納得できなければハンコは押さないことです。
私は20年ほど前、生命保険の乗り換えで痛い目にあったことがあります。金融機関に勤めていたものとしては恥ずかしい話なのですが、加入していた生命保険を新商品へ乗り換えるよう勧められ、良く考えずに手続きをしてしまいました。
当時、金利が急速に低下していた時期で、保険会社としては高金利で固定された保険商品を低金利に変更しないと経営の根幹にもかかわる状況になっていました。
担当者は、新しい保険のメリットを強調し、乗り換えることで補償の期間が短くなりかつ配当金が減るということはほとんど説明されませんでした。
乗り換えの手続きが終わり、計算書が来てようやく条件の悪い商品に乗り換えたことに気が付きましたが、後の祭りでした。
業種は違うとはいえ、同じ金融業界に勤めているのだから予想ぐらいはついただろうに、と思うと悔しくてその晩は眠れませんでした。
それ以降、契約するときは、必ず約款まで目を通すようになりました。だんだん老眼になってきて、あの細かい字を読むのはつらいのですが。ハンコを押したらそれは自分の責任です。
あとでこんなはずではなかったと言わないように自分の目で納得するまでパンフレットなり、約款なりを良く読み込みましょう。
現在は、「保険の窓口」のように、保険会社と契約者双方の立場と業者さんもいるので、このようなことは昔ほどは無いと聞いていますが、やはりご自分の契約内容は納得いくまで確認する、ということが大切だということをまた強調しておきたいと思います。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。